このシリーズも1年ぶりになってしまいました。
気がついたら1年。
あっという間に過ぎてしまいましたが,前回(5)をどこまで書いたか覚えていません。
ちょっと読み直してみると,IFCなる釣りクラブができたところで話が終わっています。
何だかイワナはずいぶん遠いなあと思いつつ,話を進めることにします。
春になりました。
1992年の春です。
釣りシーズンの始まりです。
IFC(インターナショナル・フィッシング・クラブ)のメンバーも,ぼつぼつ牛久沼での鯉釣りを始めた頃の話です。
インターナショナルと言っている割りには,みなさん,近場の牛久沼で釣りをしておりました。
そんなある日。
ウーやんは,声高らかに宣言しました。
「我々IFCは,インターナショナルを名乗るからには,牛久沼でばかり釣りをやっていては,イカン! 広く海外にも釣り場を求めるべきである!よって,第1回強化合宿を行う。メンバーは,合宿の候補地を探すように!」
いよいよインターナショナルな釣りクラブの活動開始のときが来ました。
メンバーは,それぞれ候補地を考えました。
今なら,インターネットで検索して,候補地を探すのだろうけど,当時は,そんなモノはありません。
ひたすら頭の中で考えるだけです。
弱い頭と少ない情報で考えるわけですから,なかなか候補地が見つかるわけがありません。
で,結局,候補地に上がったのは,
@メコン川で大ナマズを釣る。
Aアマゾン川で,ピラニアを釣る。
Bアムール川でチョウザメを釣る。
Cライン川でドイツ鯉を釣る。
といったような,何とも情けない企画が並びました。
言ってることは,壮大ですが,頭の弱さがよくわかる企画ばかりです。
まあ,インターナショナルという点では,どの企画も甲乙付けがたいモノがありますが,全くと言っていいほど現実感がありません。
そこで,私が立ち上がりました。
情報収集に奔走します。
インターネットはありません。
本屋に行きました。
立ち読みです。
ウーやんには内緒ですが,私は,飛行機が苦手です。パスポートも持っていません。外国には行ったことがないし,いろいろ面倒くさそうなので,勝手に国内に決めていました。
インターナショナルは,無視です。
とりあえず,インターナショナルは,最終目標にして,今回は第1回でもあるので近場の釣り場を探してみました。
徐々にインターナショナルな釣りクラブに発展していけばいいのです。
最初から海外というのは無謀です。
それに,しつこいようですが,私は飛行機が苦手です。パスポートも持っていません。
というわけで,第1回の合宿地が決まりました。
千葉県の,亀山温泉です。
房総半島の真ん中あたりにあります。
ガイドブックによれば,「ホテルの前に亀山湖というダム湖があって釣りもできる」とあります。
メンバーの皆さんも,温泉があるからまあいいかということで,海外は諦めてくれました。
1泊2日の強化合宿の始まりです。
宿泊先は,亀山温泉ホテルです。
予算は15000円。近場にしてはちょっと高いですが,海外に行くよりは安いです。
メンバーは,いつものウーやん,青井さん,菊ちゃん,ヨシヒロさん,ノリさん,そして私の6人です。
3月のある土曜日。
車2台に分乗して,亀山ダムを目指します。
初めての釣り場に皆さんワクワクしています。
IFCのお揃いのジャージもキマっています。(と本人は思っている)
それにしても,亀山ダム,茨城県からは遠かったです。
直線距離だと近いのですが,直線距離で行ける道がありません。
だいたい,関東地方の道というのは,東京から放射状に伸びているか,東京を円心にして環状に走る道がほとんどです。
茨城から房総半島の真ん中に行こうとすることじたい無謀です。
カーナビもありません。
地図を頼りにあっちへ行ったりこっちへ行ったり。
しかも房総半島の真ん中というのは,関東平野の割りには山が多い。谷も深い。
道に迷いながらやっとの思いで亀山ダムに着きました。
海外に行くよりは近かったですが,行くだけでぐったりです。
それでもみなさん,ダム湖の湖面を見渡し,釣りの支度を始めています。
茨城県外での鯉の吸い込み釣りは,みなさん初めてです。
さっきまでぐったりしていたのが嘘のように生き生きしています。
何だかとてつもない巨鯉がいそうです。
遠投好きのウーやんには,十分すぎる広さです。
それぞれ,車の中のイライラを吹き飛ばすかのように,思いっきり竿を振りました。
そのときでした。
みんな揃って,「あれっ」という顔をしています。
どうも今までの牛久沼や小貝川の吸い込み釣りとは様子が違います。
何十メートルも先の方へエサを投げ込んでいるのに,どんどんラインが手元に戻ってきてしまうのです。
エサの着水地点は,確かに遥か先の方です。
それでも,どんどん戻ってきてしまう感じなのです。
そうです。
ここは,ダム湖です。
やたら水深が深いのです。
牛久沼や小貝川はせいぜい水深1〜2メートルです。
ところが,この亀山湖は,ダム湖なので見た目以上に水深があるのです。
吸い込み釣りは,エサを湖底に沈ませる釣り方ですから,どうもダム湖の釣りには合わないようです。
「こんな深いところに鯉がいるのかなあ。」
「深海魚ぐらいしかいないんじゃないの。」
なんだか,今回の合宿地を決めた私の方に,いや〜な視線が向けられています。
さらに,ダム湖というのは川を堰き止めた人工の湖ですから,湖底も自然の状態ではありません。
水没した樹木が結構そのまま残っているのです。
したがって,リールを巻き上げると木の枝にひっ掛かります。
みんなのイライラが募ってきました。
「牛久沼の方がよかったなあ。」
「はるばる来た甲斐がないよう。」
「ここは鯉がいないんじゃないの。」
いや〜な視線は,ますます強烈になって私の方へ。
みなさん,吸い込み竿はほったらかしにして,別の釣り方を思案しています。
私以外は,みんな釣りのベテランです。
ダメならダメで何とかする方々です。
湖底がダメだということで,ウキ釣りに切り替えたようです。
これが大正解。
尺オーバーのブラックバスが面白いように釣れるのです。初心者の私以外は。
私への冷たい視線が,和らいでいくのが感じられます。
みなさん,バス釣りに夢中です。
そのときです。
私の吸い込み釣りは,いまだキャスティングができないのでエサは相変わらず手投げです。
遠投は利きません。
ごく岸に近いところにエサを入れていました。
その竿先の鈴が鳴っています。
遂に掛かりました。
大鯉です。
50センチを超えています。
また,みなの視線が冷たいモノになっていきました。
「ビギナーズラック」という言葉が聞こえてきます。
私の大鯉を見て,みなさん,再び鯉釣りになりました。
2匹目のドジョウならぬ2匹目の大鯉を狙っているようです。
そのうち雨が降ってきました。
最終的に釣れたのは,結局,私の1尾のみ。
何だか状況はかなりよくない方向にいっています。
ホテルにチェックインし,温泉に浸かりました。
この温泉が強烈でした。
お湯が醤油のように茶色いのです。
今でこそあちこちの温泉巡りを楽しんでいますが,当時は茶色の温泉は初めてでかなり驚きました。
夜は,宴会です。
今日の釣りは忘れようという勢いで呑んでいます。
宴会のあとは,麻雀です。
お酒が入ればみなさん,満足しています。
ところでこの亀山温泉ホテル,一見リゾートホテルのような外観ですが,実は・・・
この先を書くと長くなるのでやめておきます。
いちいち触れていると,イワナにたどり着きません。
そうです。
当初は,初めてイワナを釣ったときの感動を書こうと思っていたのです。
ちょっと話をスピードアップします。
2日目。
亀山湖は,釣れないと判断して,観光ガイドブックを調べました。
すると近くに「三島湖」という湖があるようです。
しかも,観光ガイドには,「ヤマベ,コイ,ハヤの宝庫で,釣り糸を垂らしておくだけで釣れる。」と書いてあります。
この記述が事実なら,大発見です。
1日目の結果を挽回すべく,三島湖に行きました。
雨が降っています。
それでもみなさん,やる気は満々です。
なにせ,「釣り糸を垂らしておくだけで釣れる」のですから。
ところが,湖に着いてガッカリしました。
三島湖もダム湖なのです。
水深がやたら深いのです。
しかも,ヘラブナ釣りの釣り場として整備されているようです。
ガイドブックの嘘つき。
全員,ボウズでした。
というわけで,IFC第1回合宿は,大失敗に終わったのです。
「やっぱりメコン川の方がよかったなあ。」ウーやんのつぶやきです。
それで,イワナはいつ登場するのかというと,お待たせしました。
イワナはまだまだ釣れませんが,イワナが釣れるきっかけとなる出来事がこの1ヶ月後,4月に起きるのです。
さて,それはどんな事件なのか。
次回,請うご期待。
今回は,ここまで。
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