56.イワナの本棚(1)「東北の渓流」
書名:「東北の渓流」
著者:阿部武
出版社:つり人社
発行年:昭和42年8月初版(昭和50年度版)
定価:650円
体裁:モノクロ写真8ページ,全202ページ

                                    
目次
○温泉と釣り場案内
 ・下北半島 ・八甲田 ・西十和田温泉郷 ・八幡平 ・栗駒山 ・早池峯の渓流 ・出羽三山
 ・朝日連峰 ・飯豊連峰 ・吾妻連峰 ・奥会津 ・鳥海山の渓流
○渓流釣りの研究〜職業漁的体験から〜
 ・渓流魚の生活 ・お米の値段とイワナの価値 ・伝統の渓流づり
 ・エサづり ・エサは何がいいか ・イワナ釣りのポイント ・藪沢のつり ・大川のつり
 ・毛針つり ・大川のつり ・毛針について
 ・大物のいる場所 ・案内者 ・先行者 ・あぶれ ・ヤマメ,イワナの増殖 ・東北のイワナ,   ヤマメ ・地図による渓流づり ・服装と携行品

ひとこと 
 本書は,阿部武氏の数少ない著作の一つであり,釣りの世界では知る人ぞ知る名作中の名作です。
 たまたまネットオークションで見つけ,半額程度で手に入れましたが,復刊を望む人も多い幻の著作なのです。たまにオークションでも見かけるので,定価より高くても絶対に買って損のない一冊です。渓流釣り師,必読の書と言っても過言ではありません。
 もともと東京新聞の新聞記者だった阿部氏の文は,味わい深く,前半の「温泉とつり場案内」は,紀行文としても十分楽しめます。文学的にも非常に優れた作品です。ただ,平成の今となっては釣行の参考にはなりませんが,昔の温泉やつり場を知るには貴重な資料となっています。
 そして,圧巻は何といっても,後半の「渓流釣りの研究」です。阿部氏の「川の下にも川がある。川の横にも川がある。それがイワナ,ヤマメの渓川である。」という言葉は,名言として今日も語り継がれています。仕掛けや釣り方,ポイントの選び方など,職漁師ならではの技術が惜しげもなく披露されています。たぶん,本書が世に出るまでは,画期的な内容であったと思われます。釣りの常識を覆す,初めて活字になった渓流釣りの研究書としても,大いに価値のある一冊です。

「イワナ雑記」メニューに戻る