12.昭和村見聞記(7)
061 ニジマス

 野尻川の本流で釣りをしていると,思わぬ大物がかかってびっくりすることがある。
 釣り上げてみるとそれはニジマスで,大いにがっかりする。
 毎年9月に釣り大会があり,その釣れ残りがかかるのだ。
062 白森清水

 舟鼻峠に白森清水という湧き水がある。
 国道沿いなので,ペットボトルなどに水を汲んでいる人をよく見かける。
 あるとき地元の人に聞いたのだが,ここはあまり水質がよくないと言う。
 飲み過ぎると下痢をするといっていた。
 お奨めは,代官清水だそうだ。
063 鮭フライ

 あるとき,中島屋旅館の夕食で,サーモンピンクのフライが出た。
 宿のおばちゃんが,「これなんだと思う?」と言うので,「変な鮭フライですね。」と答えた。
 するとおばちゃんは,「マスに似ているのでマスタケというきのこです。」と教えてくれた。
064 マスタケ

 ある沢の源流部で大量のマスタケを見つけた。
 そこまで行くには,小1時間歩かなければならない。
 しかも,その沢は全く釣れない沢だった。
 きのこは採りたいけれど,魚影のない沢を延々歩くのも辛いものだ。
 1度だけの入渓なので,今はどうなっているかわからないが,行ってみる勇気はない。
065 虻の免疫

 8月に沢にはいると,虻の大群に襲われて釣りどころではなくなってしまうことが多い。
 最初に虻に刺されたときは,指先を刺されただけなのに,手全体がグローブのように腫れあがってしまった。
 宿のおじちゃんは,都会の人は免疫がないから腫れるのだという。地元の人は,腫れないという。
 確かに何度か被害に遭ううちに,腫れなくなった。
066 コイ

 野尻川でコイを釣ったことがある。
 渓流魚のアタリではなかったので変だなと思ったのだが,大きなコイだった。
 池で飼っているコイが逃げたのだろう。
 錦鯉が泳いでいるのを見たこともある。
 渓流釣りでコイを見るとがっかりする。
067 カスミソウ

 昭和村の農業生産額の内訳を見ると,花の生産額が全体の半分以上を占めている。
 とりわけ,カスミソウの栽培が盛んだ。
 雪の結晶のような可憐な花は,雪深い昭和村にぴったりだ。
068 冷湖の霊泉

 玉川の上流に冷湖の霊泉という,清水がある。
 この清水は,その昔,干ばつに苦しむ村人たちのために,天狗が恵んでくれたという伝説がある。
 土用の丑の日に,この水を汲み無病息災を念じる風習が今でもあるという。
069 番犬

 中島屋旅館の裏を野尻川が流れている。
 旅館のおばちゃんによれば,ここを釣り人が通ると,隣の家の飼い犬が吠えるので,今日は何人釣り人が通ったかがわかるという。
 今は,旅館の裏は土砂で埋まりポイントはなくなってしまい,釣り人も通らなくなった。
 犬も死んでしまったのか,今は見かけなくなった。
070 鮎釣り

 かつて,中島屋旅館の裏では,大きな鮎がたくさん釣れたという。
 近年は,せっかく放流した鮎も大水で流されてしまうことが多いらしく,不漁が続いているという。
 そういえば,鮎釣りをする釣り人の姿もだんだん見かけなくなってきた。