No.371 ヤマグリごはん

 渓流釣りもシーズン終盤になると数釣りができなくなります。釣りの合間の秋の楽しみは,山栗拾いです。昭和村では,いたるところで山栗を採ることができます。採るのは簡単だけれど,皮を剥くのが一手間です。畑の栗よりかなり小粒なので,とても面倒です。それでも味は畑の栗より素朴で美味しいです。釣りシーズンももうすぐ終わり,ちょっと淋しい気持ちになる中島屋の朝ご飯でした。
No.372 ヤマグリの栗鹿の子

 気配を消して沢沿いを歩く。ポイントに静かに餌を流す。そのとき突然,頭の上に大きな栗が落ちてきた。帽子をかぶっているので痛くはないが,心臓が停まりそうになる。イワナはどこかへ隠れてしまっただろう。全く厄介な栗の悪戯である。中島屋特製の栗鹿の子,酒のつまみにはならないけれど,甘味の乏しい食膳にぴったりの箸休めです。秋を感じるデザートです。
No.373 ツクシの煮物

 ツクシ(土筆)は,スギナから放出される春に芽吹く胞子茎です。春の新しい息吹を感じさせてくれる山菜ですが,それほど美味しい物ではありません。昭和村に限らず,都市部においても春の山菜として親しまれています。袴を取って茹でて灰汁を抜き,出汁で軟らかく煮たり,佃煮にしたりするのが一般的な調理法のようですが,手間を考えると,どうしても食べたい山菜ではありません。昭和村では雪が融けてから,春の終わりが旬になります。
No.374 カラハナソウの天麩羅

 ビール好きにはたまらない逸品です。秋に収穫できる山菜は限られています。キノコ採りが苦手な私は,釣りの合間のカラハナソウ採りが秋の楽しみにです。カラハナソウは,ホップの親戚にあたり,ビールのような苦みが心地よく,天麩羅が最高にうまいです。カラハナソウの雌株につく雌花が変化した果穂を食用にしますが,1本蔓を見つければ大量に収穫できます。ビールのおつまみにぴったりです。秋にはいつも,中島屋で天麩羅にしてもらっています。
No.375 コウタケごはん

 朝食前に釣りに行き,宿に戻ると玄関先にコウタケご飯の香りが漂ってきます。食欲をそそる秋の香りです。昭和村では,マイタケと共にコウタケがよく採れるようです。コウタケは,その名の通り香りの強いキノコです。正しくは,シシタケといいます。高さは20センチほどになり,傘も直径20センチを超える大きなキノコです。特有の香りと味があり,特に乾燥させると香りが増すところから,保存して特別な日の炊き込みご飯として利用されるなど,大変珍重されている貴重なキノコです。買うと高いです。
No.376 蕎麦掻き

 昭和村は蕎麦の産地です。矢ノ原高原の矢ノ原蕎麦が有名です。村内の食堂でいただくこともできますが,お土産用に蕎麦打ちをしているお店が何軒かあります。いずれも,前日までに予約が必要で,打ちたてを購入することができます。さて,中島屋さんでは,蕎麦は打たないので,蕎麦掻きを出してくれました。蕎麦の香りを楽しむには,蕎麦掻きが一番です。日本酒が進みます。
No.377 会津馬刺し

 会津は,日本三大馬刺しの産地の一つです。馬刺しが好きだと言ったら,夕食に出してくれるようになりました。宿のおばちゃんは,昔馬を飼っていたそうで,あの瞳を見たらかわいそうで食べられないと言っていました。会津の馬刺しは,赤身が基本です。熊本の高級な霜降り馬刺しも美味しいですが,会津の赤身は安価で東北らしい存在感のある馬刺しです。
No.378 フキノトウの天麩羅

 釣りの合間の山菜採り,シーズン初めはフキノトウです。解禁当初,日当たりがよく雪が融けている沢沿いで収穫します。道路沿いのフキノトウは,排ガス臭いので採らない方がよいそうです。できるだけ雪が融けたばかりのところを狙います。フキノトウは芽出し直後の花が開く前のものを,根ぎわから採取します。若いものほど苦味が少なく香りも強くて美味しいです。天麩羅は,塩でいただくのが美味しい食べ方です。
No.379 アサツキ

 通常,茎と葉をお浸しにするアサツキですが,鱗茎(球根)だけを味噌でいただきます。辛みが強く薬味のようですが,これがなかなかお酒に合います。1センチにも満たない鱗茎ですので,宿のおばちゃんも相当手間がかかるようです。凝った料理ではありませんが,手間を考えると一粒一粒大事にいただきたいものです。普通の旅館ではまずいただけない逸品です。
No.380 イワナの唐揚げ

 山国の旅館といえば,たいていイワナかヤマメの塩焼きが,食膳にのぼるのではないだろうか。中島屋旅館で魚料理といえば,身欠きニシンぐらいでイワナもヤマメも出てきません。それは,宿のおじちゃんの作り物は出さないというこだわりです。どこの旅館でも出てくる渓流魚は養殖物です。天然物にこだわる中島屋では,自分で釣ってくれば無料で料理してもらえますが,養殖物は出しません。小ぶりなものは唐揚げがうまいです。

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102.昭和村見聞記(39)中島屋旅館山の幸編その4