No.351 トウガンの煮物

 トウガンは,インド,東南アジアが原産の夏野菜です。特に昭和村の食材というわけではなくどこでも栽培されている野菜です。それなのに,中島屋の料理としては外せない印象深い一品となっています。それはなぜかというと,中島屋でトウガン料理が出てくると,そろそろ釣りシーズンも終わりという雰囲気で,淋しくなるからです。巡る季節に思いをはせる上品な煮物です。中島屋のおばちゃんがトウガンを土産に持って行きなせいと言うけれど,実は50センチ以上ありいつも遠慮してしまいます。できれば,50センチ以上のイワナを土産にしたいものです。
No.352 コシアブラの天麩羅

 コシアブラは,タラノメと同じウコギ科の山菜です。タラノメほどの知名度はありません。初めてコシアブラをいただいたのが中島屋でした。中島屋でも昔から採取していたわけではなく,山菜採りのお客さんに教えていただいてから出すようになったそうです。昭和の終わり頃のことでしょうか。コシアブラは,杉林の中に群生していることが多く,1本見つけると,収穫は容易です。昭和村では5月下旬が若芽の採取にいい頃です。苦みと香ばしさがあり,私はタラノメよりコシアブラの方が好きです。

No.353 ジュンサイと蕎麦の実

 ジュンサイは,水がきれいで水深の浅い池や沼などに育つ食用の多年草です。古事記にも「ぬなわ」という名前で登場するなど,古くから各地で親しまれてきました。昭和村では,きれいな水環境を生かしたじゅんさい栽培が行われています。収穫期が始まるのは6月ごろです。収穫用の小舟に乗って,作業は手摘みで行われ,9月ごろまで収穫されます。ジュンサイは寒天質に覆われた若芽や茎の部分を食用とし,酢の物や和え物などにして食べます。独特のぷりぷりした食感は,初夏の訪れを感じさせる味覚です。昭和村のお土産品として,瓶詰で売られています。

No.354 コゴミごま和え

 イワデンダ科の多年生シダの一種,クサソテツの若芽をコゴミといいます。昭和村の収穫期は,5月上旬ごろです。ちょうど,ゴールデンウイークの頃なので,村は山菜採りで賑わいます。群生しているので収穫は容易ですが,成長が非常に早く,その場所ごとに収穫期間が短く限られるのが難点です。渦巻状に丸まった幼葉を採取し,おひたし,サラダ,ゴマ和えなどの和え物,天ぷらなどにして食べます。ワラビほど強くない独特の「ぬめり」があり,ゼンマイなどと違ってアクがないため調理が容易です。冷凍物ですが,中島屋では年間を通して提供されています。

No.355 ウワバミソウ油炒め

 味もクセもないウワバミソウは,渓流沿いでごく普通に見かける山菜です。群生しているので,容易に採取できます。一般的には,写真のように,葉を落として茎の部分だけ食用にします。味もクセもないだけに,物足りない山菜ですが,その分,調理法を選ばず万能な山菜です。少しぬめりがあって食感も楽しめます。中島屋では,ミズと呼んでいます。

No.356 ウドの酢味噌和え

 スーパーで売られている栽培物のウドと比べて山ウドは,香りがとても強いです。山ウドは,渓流沿いの斜面で普通に見られる山菜ですが,栽培物のように根が大きくないので,食べ頃のウドを見つけるのは結構難しいです。夏であれば大木となり白い花が目立つので見つけやすいですが,春先はなかなか見つかりません。釣りの合間のウド採りも,楽しい物です。強い香りも酢味噌和えにすることにより上品な香りに変身します。

No.357 タラノメの天麩羅

 ウコギ科の落葉低木タラノキの新芽をタラノメと呼ぶ。言わずと知れた山菜の王様です。昭和村での採取は,6月頃でしょうか。杉林などの中でよく見かけます。1本見つけると,根が繋がっており,何本も見つけることができます。せっかく見つけても,すらっとした木なので,届かなかったり,すでに1番芽を摘まれたあとだったりすることが多く,よくある山菜にしては収穫が難しいです。独特の香りは,天ぷらでいただくのが一番いいです。

No.358 マタタビとカンゾウの酢の物

 滅多に口にすることのないマタタビとカンゾウの酢の物です。マタタビは,「猫にマタタビ」で知られている落葉つる性植物です。実と虫こぶを食用としますが,どちらかというと美味しい物ではなく,冷え性,神経痛,リューマチなどに効き目があり,利尿,強心などの生薬として利用されています。カンゾウは,若芽を食べるのが一般的ですが,花も食用となります。これも美味しい物ではなく,彩りといったところでしょうか。普段の生活で口にすることがない珍しい一品です。

No.359 ニシン山椒漬け

 会津全域で昔から食べられている会津を代表する郷土料理です。山に囲まれた会津では,乾物に加工された身欠ニシンが貴重なタンパク源でした。生魚が流通していなかった時代,日持ちする身欠ニシンを先人たちの智恵により,工夫して調理され保存食として食べられてきました。身欠ニシンに山椒の葉を重ね合わせて,しょうゆと酢,酒と砂糖を入れ,漬けたものです。日本酒の肴に最高ですが,中島屋では朝食に出ることが多いです。できたら,夕食で日本酒と共にいただきたいです。

No.360 シシトウの葉の佃煮

 シシトウは,葉も食べられます。葉トウガラシのように佃煮にするのです。中島屋特製の佃煮は,ピリリと辛くて,日本酒にもご飯にも合います。家庭ではなかなか味わえない料理がいただけるのが中島屋の魅力です。料理に既製品は使わない,基本的に地物を使うというこだわりが,見た目の豪華さではなく本物の味を提供するところにその良さがあるのです。禁漁になると中島屋の味が恋しくなります。

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100.昭和村見聞記(37)中島屋旅館山の幸編2