概要
 茨城県の最北部,福島県との県境に近い大津港から山側へ車で10分ほど入ったところにある鉱泉宿です。海からは,それほど離れていませんが,山里の集落にある農家のような一軒宿です。郷愁を誘うかつて来たことがあるような風景の中に佇んでいます。敷地は広く,母屋,離れなどの建物以外に池や駐車場があります。周辺に特に見所はなく,散歩してみましたが,田畑と山があるばかりです。海に近い割に海も見えません。
歴史
 敷地の入口に石碑が建っています。そこには「鹿の湯松屋の由来」とあり,次のように刻まれている。「古老よりの言い伝えによれば,創業は古く文明年間の創業という。当時一匹の大鹿が猟師に追われ傷つき此の地に来る。身に受けた矢数の傷を湧き出ずる霊泉にひたり歩行困難なりしを数時間で全治し,何れかに立ち去りけんと。それを見た里人達は,素晴らしきお湯の効能に驚き,人呼んで鹿の湯と名告たりと。幾人の 病をいやす湯のいずみ これを宝のわくと言うらん」。よくある伝説のパターンです。
湯ノ網鉱泉
 今は廃業しましたが,かつては,もう1軒の鉱泉宿がありました。元湯小泉屋です。この写真の奥,松屋の裏手に,建物が現在も残っています。小泉屋は,鉱泉発見以前からの旅籠で創業500年の歴史があるそうです。現在の建物は明治初年築のもので,本館と5棟の離れは渡り廊下でつながり随所に当時の高度な建築技術が見られます。浴室も天井が高く銭湯のようだが柱は1本もなくタイル張りで趣のある宿だったようです。昔の賑わいが浮かんでくるような建物です。
客室
 2階の2号室と3号室です。一部屋が居間,もう一部屋が寝室となっています。2部屋使えるなんて贅沢です。
 居間には,テーブル,お茶セット,ファンヒーター,今は珍しい1時間100円のブラウン管テレビ,エアコン(冷房のみ),畳の上にカーペットが敷いてあります。浴衣,タオルはありますが,バスタオルは付いていません。
 部屋には,冷蔵庫,水道などはなく,トイレは共同で洋式です。
 部屋は離れも含め,8部屋あるようです。
寝室
 隣の部屋が寝室です。すでに蒲団は敷いてありました。いつでも寝られる体制になっています。2間続きではないので,居間と寝室の行き来は,一旦,廊下に出なければなりません。それでも,二部屋使えるのは贅沢です。
部屋からの眺め
 部屋からは,宿の庭先が見渡せます。農家の庭先そのもので,いい感じです。
 心が落ち着きます。
 窓の外は絶景というのもいいですが,このような景色もいいものです。
浴室
 この宿の魅力は,何といっても浴室です。吹き抜けの高い天井,アーチ型のドア,ステンドグラスの飾り窓,大正ロマンを感じさせるレトロな木造の浴室です。浴室は1つなので,入浴中の札を掛けて貸し切りで入ります。湯船の横には効能書。「脳,神経衰弱,神経痛,リウマチ,胃腸病」と書かれています。よく磨かれたタイルの壁には,鹿が遊ぶタイル絵が嵌め込まれています。いい雰囲気です。残念なのは,浴槽がポリバスという点です。大きなポリバスに麦茶色の濁り湯が満たされています。かなり熱く沸かしてあるので,カランの源泉で加水します。循環で,鮮度に欠けますが,鉄分たっぷりのいい湯です。
泉質
源泉名:湯ノ網鉱泉(鹿の湯1号泉)
泉温:13.6℃  26l/min動力揚湯
pH6.4  成分総計357mg
含鉄(U)-ナトリウム・カル シウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉
色:茶褐色   臭い:鉄錆臭
浴用加熱・循環
入浴時間:6:30〜20:45(夜中に清掃をするので朝のお湯の鮮度がいいです。)
夕食
 この宿のもう一つの魅力が,夕食です。メインは,キンキのオーブン焼き。270〜280度の高温で焼いているので,頭から尻尾まで豪快に食べられます。キンキ自体から脂がでて,唐揚げのような塩焼きです。お刺身は,カツオ,サヨリ,サーモン。これまた旨いです。そのほか,煮物と漬け物,品数は少ないですが,一品一品味わい深い逸品ぞろいです。
 食事は,部屋食でゆっくりいただけます。
朝食
 朝ごはんもいい感じです。メインは,柳かれいの干物です。そのほか,生卵,生野菜,焼き海苔,味噌汁と定番のメニューです。デザートにみかんが1つ。美味しくいただきました。
松屋データ
所在地:茨城県北茨城市関南町神岡下1435
電話:0293−46−1086
料金:今回8617円(2食付き・大人二人一人当たり税込み)
   そのほか,夕食をグレードアップしたコースあり
立ち寄り湯:500円(10:00−16:00 )
HP

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湯ノ網鉱泉「鹿の湯 松屋」(2015年2月14日宿泊)