那須湯本にある温泉民宿です。内湯のある民宿は2軒あり,そのうちの1軒です。
 鹿の湯にほど近い湯治場然とした路地に面して佇む木造2階建ての小さな民宿です。
 那須温泉の開湯は古く,その発見は第34代舒明天皇の御代(630年ごろ)に遡ります。茗荷沢村(みょうがさわむら:現在の那須町高久乙)に住む郡司の狩野三郎行広が狩りの途中,射損じた白鹿を追いかけ霧雨が谷(現在の鹿の湯あたり)という深い谷に分け入ったところ,自らを温泉の神と告げる白髪の老翁が現れました。老翁の進言に従って三郎は鹿を探し,温泉に浸かって矢傷を癒している白鹿を見つけました。三郎はこの温泉を鹿の湯と名付け,温泉の杜(現在の那須温泉神社)を建立し,射止めた鹿角を奉納したといわれています。
 この「新小松屋」は,明治時代に創業した歴史のある温泉民宿です。

 今回,宿泊したのは,2階6畳の「梅の間」です。
 畳は古いですが,清潔で温かみのある部屋です。
 暖房は,ガスファンヒーターがあり,快適です。
 テレビは液晶テレビでしたが,故障していました。交換してくれるとのことでしたが,特に観たい番組もなかったので,そのままにしてもらいました。硫化水素でテレビは頻繁に故障するそうです。
 浴衣・羽織・タオル(バスタオルなし)・歯ブラシ・お茶・ポットなど揃っています。冷蔵庫は共同で,廊下にあります。シャンプー&リンス・ボディーソープは浴室にあります。
 客室は,10畳×2部屋,8畳×1部屋,6畳×4部屋の全7室(トイレ・洗面所は部屋にありません)です。トイレは男女別のウォシュレットタイプです。
 二箇所ある浴室は狭い方が女湯,広い方が男湯となり,男湯の方は独立した湯小屋のようになっています。
 源泉は鹿の湯から引き湯した「鹿の湯・行人の湯混合泉」です。鹿の湯から非常に近いため温泉タンクに約58℃で入ってきます。浴槽温度は,42℃〜45℃で管理されているそうですが,熱くて長湯はできません。 のんびりお湯に浸かるという感じではありません。午前9:00〜午後17:00 と 午後19:00〜午前0:00の間は,誰も入っていなければ貸切り利用もできるそうです。
 浴槽は,2〜3人で入れる木の湯船です。
 小さいながらも風情のある浴室です。
 湯の花たっぷり,濃厚な硫黄泉です。

源泉:鹿の湯・行人の湯混合源泉
泉質:酸性-含硫黄-カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)
泉温:68.4℃
pH=2.5 成分総計=1040mg H=3.2mg Na=39.2 K=10.6 Ca=70.1 Mg=16.6 Al=7.6 Mn=1.2 Fe2=1.4 F=0.8 Cl=79.9 HSO4=2.4 SO4=398.2 H2SO4=0.3 HAsO=0.1 H2SiO3=228.3 HBO2=1.0 H2S=28.8

 夕食は,部屋食です。
 厚さ1センチはあろうかという豚肉の紙鍋が目をひきます。そのほか,鮎の塩焼き,牡蛎のホイル焼き,茶碗蒸し,ほうれん草のお浸し,お新香(白菜),フルーツ(グレープフルーツ),汁椀(ニラの卵とじ)の8品。
 御飯もたっぷりあり,とても食べきれない豪華な手料理です。
 

 宿の近くには,那須温泉浴場組合が管理する共同浴場「滝の湯」があります。
 宿には電子キーがあり,宿泊者はそれを借りて共同浴場入口を開錠して利用することができます。内湯がとても熱いので,主にこちらの温泉を利用しました。熱湯とぬる湯,泉温の違う木づくりの浴槽が二つ並んでいます。
源泉:御所の湯
泉質:単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)
泉温:57.8℃
pH=2.6 溶存物質=894mg H=2.5mg Na=29.7 K=7.2 Ca=68.8 Mg=23.3 Mn=1.3 Fe2=0.8 Al=7.6 F=1.0 Cl=74.7 HSO4=33.8 SO4=399.3 H2SO4=0.2 H2SiO3=241.1 HBO2=3.0 H2S=32.8
 朝食です。こちらも部屋食です。
 温泉玉子,シャケ,納豆,キクラゲの油炒め,漬け物,梅干し,海苔,味噌汁。
 朝は,これだけあれば,十分です。
 日本の正しい朝食です。
 美味しくいただきました。
 

  宿のすぐそばの鹿の湯は,割引券で安く入れます。
 鹿の湯には,時間湯という独特の入浴法があります。浴槽に浸かる前にまず,かぶり湯用の浴槽にタオルをかけた頭を差し出し,柄杓ですくった47度ほどある熱い湯を100〜300回後頭部からかぶります。これを「かぶり湯」といい,温泉の薬分を効率よく吸収するとともに,入浴後のめまい,吐き気などの湯あたりを防ぐ効果があるといわれています。
かぶり湯の後は,41,42,43,44,46,48度(女湯には48度がない)の6種類の浴槽から好きな温度を選んで入浴します。私は,41℃のみ入浴しました。この辺がちょうどいいです。

 部屋からの眺めです。石畳の路地の向こうに「鹿の湯」があります。
 明治時代に整備されたという温泉街。
 明治40年には,旅館19軒,飲食店他18軒,茶屋4軒の約40軒が営業していたそうです。
 大正時代には内湯付きの旅館が登場し,これ以降は内湯旅館が主流となっていきます。
 共同浴場は,地元住民のために場所を移して残され,現在の那須湯本の原型となったそうです。

那須湯本温泉 民宿「新小松屋」

所在地:栃木県那須町湯本178-3
電話:(0287)76-3633
宿泊料:平日1人2食付き6650円
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那須湯本温泉「新小松屋」(2013年3月24日宿泊)