35.2000年4月1日〜4月2日
 数年に1度の土曜日解禁。          
やっぱり雪が深かった。
ここから先は,かんじきをはいて歩いてゆく。
 仕事の関係で,土日しか釣りに行けない。
 そんな我々に,4月1日が土曜日というチャンスが訪れた。
 今回のメンバーは,秋さん,本堂さんをはじめとする職場仲間5人。
 大きな期待で出かけたのだが,とにかく雪が深い。
 雪が多くて川岸まで近づけず,竿を出すところが限られる。
 天気の方も,冬の山の天気の典型で,晴れ間が出たかと思うと雪が降ってきたり,不安定だ。
 風も強くて,スキーウエアを着ていても寒さが身にしみる。
 アタリもないので,ひとり釣りを諦めて,早々に宿に戻る。
 宿のおじちゃんが,ひとりコタツに入っていた。
 どうもおばちゃんを見かけないと思ったら,体調を崩して入院しているという。
 寒さがとれずコタツにもぐり,おじちゃんの話を聞いているうちに眠ってしまった。
 他の4人も午後には帰ってきた。ヤマメねらいの菱沼さんはたくさん釣ってきたけど,あとの3人はさんざんだったようだ。
 それからみんなで温泉に行き,おばちゃんがいないので夕食が作れないと言うので,食料品店で買い出しをした。
 今夜の夕食は,玉梨よせ豆腐,青唐辛子味噌,馬刺,魚肉ソーセージ,パックの漬け物,ワカサギフライ,イカゲソ,ピーナッツ,バナナ,チーズにカップ麺,そしてあんパンと,大学時代に下宿で飲んでいるようなメニューだ。
 イワナが釣れなかった私は,ヤマメ酒。これはおいしくなかった。
 結局,みんな酔っぱらってしまい10時まで延々宴会は続いた。

 2日目。
 意を決して沢へ降りていった。
 雪の中を延々歩いて,最後は滑り台のように崖を降りていく。
 雪に埋まりながらなので,意外にスピードはつかない。
 川岸は雪が張り出しているが,ここは勇気を出して飛び降りた。
 ここは誰も来ていない大場所だ。大物を頭に描き竿を振る。
 気持ちは高ぶるが反応はない。
 しばらくしてやっと,弱いアタリがあった。小さなヤマメだった。
 ここまで来てこれで帰るわけには行かないと,粘ってみたがだめだった。
 諦めて帰ろうと思ったが,帰り道がない。
 上流は滝だし,下流へ行けば崖がきつくなる。
 降りるときは滑り台のように滑り降りたが,上がるには手がかりがないのだ。
 どうすることもできないので,竿を雪に突き刺して,竿にぶら下がりながら懸垂で登る。
 さくさくした雪だし,渓流竿が支えなのだから,不安定きわまりない。
 斜度がきついので立つこともできず,竿を杖に這って歩く。
 場所によっては下半身が雪に埋まって,身動きできなくなるところもあった。このまま死んでしまうのではないかと思った。
 手は,冷たさで感覚がなくなっている。
 ヤマメ1尾のために地獄を見た。
 林道までの道のりが何と長かったことか。
 結局釣果は,ヤマメ3尾のみ。4月1日という年に1回のお祭りは,全くの期待はずれだった。
 あとで聞いた話だが,長年昭和村に通っている人は,雪が深いので4月下旬にならないと来ないそうだ。


「イワナ釣り」メニューに戻る